Inventor ケーブル & ハーネス
Inventor Professional の 3D 配線環境。モータ配線を例に手順を整理。
要点: Inventor Professional 限定の「ケーブル & ハーネス」環境で、アセンブリ内にワイヤ・ケーブル・リボンケーブルを 3D 配線できる。Standard には無い。
ファイル種別と作業場所
ハーネス作業は .ipt と .iam で明確に役割が分かれる。ここを間違えると「配線するピンが見つからない」ことになる。
| ファイル | 役割 | ハーネス関連でやること |
|---|---|---|
.ipt (パーツ) | 単体部品 | ピン配置のみ (3D モデル タブ → ハーネス パネル) |
.iam (アセンブリ) | 部品を組んだもの | ハーネスサブアセンブリ作成 / ワイヤ作成 / セグメント / 配線 / レポート |
つまり:
- コネクタ.ipt を開いている状態: ピンを打つだけ。ワイヤは引けない (相手がいないので当然)
- 機体.iam を開いている状態: ピンは打てない (パーツを編集モードで開き直せば可)。ワイヤ・セグメント・配線が可能
リボンの構成 (ケーブル & ハーネス タブ)
ハーネス サブアセンブリをアクティブにした状態で見えるパネル:
- 作成: セグメント作成 / ワイヤ作成 / ケーブル作成 / スプライス作成 / リボン ケーブルを作成 / 折り曲げを作成 / バーチャル パーツの割り当て / ワイヤ ピンを再接続
- ルート: 自動ルート / ルート / ルート解除
- 管理: ハーネス データをインポート / レポート / ライブラリ / 曲げ半径を確認 / ネイルボード
- 表示設定: 中心線表示
- 終了: ケーブル & ハーネスを終了
全体ワークフロー
.iptでコネクタ部品に ピンを配置 (Author).iptを保存・閉じる.iamを開く (機体アセンブリ or 練習用の新規アセンブリ)- コネクタパーツを配置・拘束
環境タブ →ケーブル & ハーネスでハーネス サブアセンブリ作成- 各 occurrence に RefDes を割り当て
- ワイヤ作成 で配線 (または ハーネス データをインポート で
.csv一括) - セグメント作成 で束ね経路を作る
- ワイヤを 自動ルート or ルート でセグメントに流し込む
- レポート で BOM 出力 / ネイルボード で 2D 展開図
モータ配線の手順 (M3508 × 4 + C620 ESC を例に)
1. コネクタパーツにピンを配置 (.ipt 側)
モータ側・ESC 側のパーツを単独で開く:
- ブラウザのパネル部を右クリック →
パネルを表示→ハーネスを ON ピンを配置で各接点に作業点を配置- 名前を付ける (M3508 なら
U,V,W/ CAN 側はCAN_H,CAN_L,GND,+5V) - 保存
コンテンツ センターに登録 (パブリッシュ) しておくと再利用可。
2. アセンブリを開いてパーツを配置 (.iam 側)
- 機体アセンブリ .iam を開く (無ければ新規作成)
- ピン配置済みの .ipt を
コンポーネント配置で配置 - 拘束で位置を固定
3. ハーネス サブアセンブリを作る
環境タブ →ケーブル & ハーネス- 名前と保存先を指定 (例:
Motor_Harness_v1.iam) - ブラウザに
Harness1などのノードができる
4. RefDes を割り当てる
アセンブリで各モータ occurrence を右クリック → ハーネス プロパティ → RefDes に M1, M2, M3, M4 / ESC は ESC1〜ESC4。
これをやらないと同じ部品を複数置いた時にワイヤをインポートできない。
5. ワイヤを作る (ピン同士をつなぐ)
前提: ハーネスサブアセンブリが アクティブ になっていること (ブラウザでダブルクリックで編集モード)。
手順:
ケーブル & ハーネスタブ →作成パネル →ワイヤ作成- ダイアログで
カテゴリと名前を選択 (例: Generic / 14AWG_RED) ワイヤ IDを入力 (例:M1_U。省略時はWire1など自動採番)- 開始ピンをクリック: モータ側の U 端子にカーソル → ツールチップに
M1 ピン Uと出たらクリック - 終了ピンをクリック: ESC 側の U 端子で
ESC1 ピン Uをクリック 適用でワイヤ確定 (2 ピン間が直線で結ばれる)- ダイアログは開いたままなので次のワイヤへ
キャンセルor 右クリック終了で抜ける
この段階ではワイヤは アセンブリを貫通しても良い。実際の取り回しは後のセグメントで決める。
つなぎ方のパターン
- 1 対 1 直結: 上の手順そのまま。一番基本
- 1 対多 (分岐):
スプライス作成で仮想分岐点を作り、電源→スプライス→各コネクタの順で配線。バッテリ→電源分配基板→ESC1/2/3/4 の分岐など - 連続ピン (並列コネクタ):
リボン ケーブルを作成でコネクタ A のピン範囲と B のピン範囲を指定して一発で作成 - 大量 (20 本以上):
管理パネル →ハーネス データをインポートで.csv一括
CSV の例:
[Wires]
WireID, Category, Name, RefDes1, Pin1, RefDes2, Pin2
M1_U, Generic, 14AWG_RED, M1, U, ESC1, U
M1_V, Generic, 14AWG_YEL, M1, V, ESC1, V
M1_W, Generic, 14AWG_BLK, M1, W, ESC1, W
M1_CANH, Generic, 24AWG, M1, CAN_H, ESC1, CAN_H
M1_CANL, Generic, 24AWG, M1, CAN_L, ESC1, CAN_Lワイヤ作成でつまづく所
- そもそも
ワイヤ作成が見つからない: 今.iptを開いている。.iamに移動する必要がある ワイヤ作成がグレーアウト: ハーネスサブアセンブリが非アクティブ。ブラウザでダブルクリック- ピンがハイライトしない: そのパーツにピンが未配置。パーツを開いて
ピンを配置で追加 - ツールチップに
ピンではなく面エッジと出る: ピンとして認識される点でない。別の点にカーソルを合わせ直す RefDes が重複エラー: 同じ部品を複数配置して RefDes 未設定。ハーネス プロパティで付与
6. セグメント (経路) を作る
セグメント = 3D 空間内のパス。ワイヤを束ねて通す「経路」。
作成手順
作成パネル →セグメント作成- 開始点をクリック (通常はコネクタ付近から)
- 中間点を順にクリック (フレームに沿って)
- 終了点をクリック (別のコネクタ付近まで)
- 右クリック →
続行or終了
スナップ対象
| 対象 | 使い所 |
|---|---|
| 既存の作業点 | 一番確実。フレームに事前に点を打っておくと楽 |
| エッジ (直線・円弧) 上の点 | フレームパイプに沿わせる時 |
| エッジの端点・中点 | フレームの角に沿わせる時 |
| 面上の任意点 | ざっくり空中を通す時。精度低い |
| 他のセグメント上の点 | 分岐を作る時 |
推奨: フレームに事前に作業点を打つ
いきなり セグメント作成 するより:
- アセンブリ環境で
作業フィーチャ→点で配線経路のキー地点に作業点を事前配置 - 名前を分かりやすく (
WP_frame_top_L1,WP_frame_corner_L2など) - その後
セグメント作成でその作業点を順にクリック
こうすると経路がフレームと確実に連動するし、後で修正しやすい。
分岐セグメント (T 字・Y 字)
CAN のデイジーチェーンや電源分配のように途中で分岐させる場合:
- 幹線セグメントを先に作る (例: バッテリー → 電源分配基板)
セグメント作成で 既存セグメント上の点 を開始点にクリック- 分岐先まで点を並べる
- 分岐点で自動的に T 字結合される
セグメントのプロパティ設定
セグメントを右クリック → プロパティ で:
- 直径: 表示の太さ (ワイヤ収容チェックにも使われる)
- 最小曲げ半径: 現実的に曲がる限界
- 色: 系統色分け (電源=赤、CAN=青 など)
目安:
| 用途 | 直径 | 最小曲げ半径 |
|---|---|---|
| 24V 大電流 (バッテリ→ESC) | 12〜15mm | 50mm |
| モータ 3相 | 10mm | 40mm |
| CAN 信号線 | 5mm | 20mm |
セグメント編集
- 点を追加: セグメントを右クリック →
点を挿入 - 点を削除: セグメント上の点を右クリック →
削除 - 点を移動: 点をドラッグ (関連スナップされてなければ)
- セグメントを削除: セグメント本体を右クリック →
削除
7. 配線 (ワイヤをセグメントに通す)
自動ルート (推奨)
- ブラウザでワイヤを複数選択 (Ctrl 押しながら or 範囲選択)
- 右クリック →
自動ルート - Inventor が既存セグメントの中から最短経路を計算して自動で流し込む
利点: 楽・早い。欠点: 意図しないセグメントを通ることがある。
手動ルート (制御したい時)
- ワイヤを右クリック →
ルート - 通したいセグメントを 順にクリック (通過順)
- 右クリック →
終了
利点: 経路を明示的に指定できる。欠点: ワイヤ 1 本ずつやると時間かかる。
ルート解除
やり直したい時:
- ワイヤを右クリック →
ルート解除 - 直線状態に戻る (ワイヤ自体は消えない)
動力線と信号線を分けるやり方
推奨手順:
- 動力線用セグメント (
SEG_POWER) を先に作る - 動力線ワイヤ (M1_U, M1_V, M1_W など) だけを選択 →
自動ルート - CAN 用セグメント (
SEG_CAN) を別に作る (少し離れた位置に) - CAN ワイヤだけ選択 →
自動ルート
自動ルート は「アクセス可能なセグメント全部」から選ぶので、事前にセグメント自体を分けておくのがコツ。
配線後の確認
管理パネル →曲げ半径を確認→ 無理な曲げがあるワイヤに警告表示設定→中心線表示の切り替えで実際の太さで見る- セグメントを選択 →
情報を表示(or プロパティ) で収容ワイヤ本数・充填率をチェック- 充填率 60% 超えたら太くするか分割検討
トラブルシュート
自動ルートしてもワイヤが動かない: ワイヤ両端のピンに繋がるセグメント経路が存在しない。コネクタ近くにセグメントの端点があるか確認- セグメントが変な形になる: 点の順序がおかしい。削除して打ち直し
- ワイヤが飛び出す: セグメント径よりワイヤ束が太い。セグメント径を大きくするか、別セグメントに分ける
セグメント作成がグレーアウト: ハーネスサブアセンブリが非アクティブ
8. 確認・出力
中心線表示を切り替えて実際の太さで見る曲げ半径を確認で無理な曲げが無いかチェックレポート→ BOM (ワイヤ長・部品リスト)ネイルボード(2D 展開図) で製作用の平面図を出力
M3508 × 4 配線の実践順序
セグメント・配線の推奨手順:
- フレームに作業点を配置 (4 モータ付近 + ESC 集約点 + フレーム経由点)
SEG_POWER_M1_M2セグメント作成 (M1〜ESC 経由 M2 まで)SEG_POWER_M3_M4同様SEG_CAN_MAINセグメント作成 (ESC 集約 → 制御基板)- 動力線ワイヤ全選択 →
自動ルート - CAN ワイヤ全選択 →
自動ルート 曲げ半径を確認- NG があればセグメントを修正 → 再ルート
練習用の最小構成
いきなり本機に組み込むと詰まりやすい。以下で 1 周させると流れが掴める:
- 簡単な直方体パーツ (箱) を 2 つ作る (
box_a.ipt,box_b.ipt) - それぞれに 4 個ずつピンを配置
- 新規アセンブリ (
test_harness.iam) を作って 2 個配置、RefDes をA1,B1 - ハーネス作成 → ワイヤ 4 本を手動で引く
- セグメント 1 本作って自動ルート
- レポート出力
モータ配線でハマりやすい所
- 動力線と CAN を同じセグメントに入れない: EMI もあるし、セグメント径がおかしくなる
- バッテリケーブルの最小曲げ半径: セグメントのプロパティで指定しないと現実的に曲がらない配線になる
- XT30/XT60 のような大電流コネクタ: コンテンツ センターに無いので自前でピン配置が必要。バレット端子は外周円エッジの中心でスナップ
- JST XH/PH コネクタ: 同上。1 度作れば使い回せる
- CAN の終端抵抗: モデル上は表現できないので、BOM に別途載せるかコメントで残す
注意
- Standard 版には無い。Professional のライセンスが必須。
- セグメントはアセンブリ内の 3D 空間上のパスとして定義するので、機構が動くとワイヤ長が変わる。
- レポートは harness assembly が最新の状態でないと出力できない。
- 同一部品を複数配置する場合、RefDes を付けないとどの occurrence にどのワイヤが刺さるか判別できない。
ケーブル & ハーネスを使わない選択肢
配線ルート確認だけで BOM 不要なら 3D スケッチ + スイープ の方が軽量。ケーブル & ハーネスが真価を発揮するのは:
- 部品点数が多い (10 本以上)
- ワイヤ長を正確に測って発注したい
- 電気設計者と機械設計者で分業する